ポケモンショック
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ポケモンショックは、1997年12月16日にテレビ東京系列(TXN)で放送されたテレビアニメ『ポケットモンスター』の第38話「でんのうせんしポリゴン」の視聴者の一部が光過敏性発作などを起こした事件の通称。ポリゴンショックやポケモンパニックなどとも呼ばれている。
概要
1997年12月16日18時30分からテレビ東京系列で放送されていたテレビアニメ『ポケットモンスター』第38話「でんのうせんしポリゴン」は、主人公のサトシたちが故障したポケモンセンターのポケモン転送システムを修理するため、電脳世界に入り込みロケット団の悪事など事件を解決する内容であった。その世界観を表現するため、電脳世界に入り込んだサトシたちをウイルスだと誤認したワクチンソフトによる攻撃シーンなどにおいて、パカパカ[1]など激しい点滅を多く使用した描写をおこなった。特に、サトシのピカチュウがワクチンソフトによるミサイル攻撃を10まんボルトで迎え撃ち、電撃の命中したミサイルが爆発するシーンにおいて、顕著に点滅が使用された。これらの描写により、当番組を視聴していた人びとの一部が光過敏性発作などの症状を訴え病院に搬送され、同日午後9時のNHK『NHKニュース9』により事件が判明、翌日以降、新聞やテレビなどマスコミで大きく報じられた。
これにより、テレビアニメ『ポケットモンスター』は第38話をもって、翌1998年4月16日まで休止する措置が取られた。また、NHK『YAT安心! 宇宙旅行』など、複数のアニメで同様の症状を起こしていた視聴者がいたことも判明した。「テレビを見るときは部屋を明るくしてテレビから離れて見る」旨がアニメ番組の冒頭に必ず勧告・警告されるようになったのは、この事件の影響である。
当時の視聴率
- 関東地区: 16.5%
- 関西地区: 10.4%
症状
ウィキペディアにも「光過敏性発作」の項目があります。 |
光過敏性発作とは、画面のちらつき、点滅などの刺激でおこる発作のことで、気分が悪くなったり、ひどいときには全身の痙攣などを伴う。刺激を受けてから短時間で発作を起こすのが特徴。発作の頻度は4000人に1人と言われている。起こりやすい年齢層は5~15歳で、加齢するとなくなることが多い。ちなみに女性の方が発生頻度が高く、全体の2/3を占める。
被害
30都道府県で685人が病院に搬送、意識不明などの重症者3人を含む計208人が入院した[2]。
年齢別
- 0歳: 1人
- 1〜5歳: 7人(内5人入院)
- 6〜10歳: 165人(内43人入院)
- 11〜15歳: 418人(内134人入院)
- 16〜20歳: 74人(内21人入院)
- 21歳〜: 20人 (内5人入院)
- 9割近くが小中学生
- 最高齢は神奈川の58歳
性別
- 男性: 310人
- 女性: 375人
症状の軽重別
- 重症者: 3人
- 中症者: 217人
- 軽症者: 462人
- 不明: 3人
- 病院に行かなかった人を含めると1万人が症状を起こしたといわれる。
都道府県別
- 北海道: 38人
- 東北地方: 青森県1人・福島県2人
- 関東地方: 茨城県26人・栃木県18人・群馬県18人・埼玉県70人・千葉県45人・東京都74人・神奈川県76人
- 中部地方: 長野県7人・山梨県6人・静岡県12人・愛知県60人・岐阜県10人
- 近畿地方: 三重県7人・大阪府76人・兵庫県29人・京都府5人・奈良県2人
- 中国地方: 島根県1人・山口県11人・岡山県18人
- 四国地方: 香川県10人・徳島県1人・愛媛県1人
- 九州地方: 福岡県45人・佐賀県10人・長崎県5人・大分県1人
報道
第一報を伝えたのは、同12月16日午後9時に放送されたNHK『NHKニュース9』である。翌12月17日からは新聞やテレビのワイドショーなどで大きく取り上げられたが、一部ではポケモンに対する批判やバッシング報道が行われた[2][3]。
影響
事件後、当初放送を予定していた「ルージュラのクリスマス」は放送中止となり、テレビアニメ『ポケットモンスター』自体も放送休止となった。『ポケットモンスター』の代替番組として、翌1998年4月16日に放送を再開するまで『学級王ヤマザキ』が放送された。また、NHK『YAT安心!宇宙旅行』など、複数のアニメで同様の症状を起こしていた視聴者がいたことも判明した。これにより、問題が表出したアニメ『ポケットモンスター』だけでなく、どのアニメ番組でも同様の事故が起きていた・起きかねなかったことが判明し、上記のポケモンに対する批判やバッシングは次第に収まっていった。
処分・対策
- 事件の発端となった第38話は欠番となり、コミックス、書籍、ビデオ(オンデマンド配信含む)など関連メディアではこの回だけ除外されている。また、題名にも使われ番組内でも登場しているポリゴンは、進化系であるポリゴン2、ポリゴンZをふくめ、事件以降にテレビアニメ『ポケットモンスター』での出番はない。なお、長らくポリゴン系統専用技だったかくばるは初登場の赤・緑発売から19年以上経った2016年6月2日放送回にて初登場した。SM編第1話ではポリゴンの名前のみ登場した。
- この事件がなかった場合、第38話以降に放送予定だった「ルージュラのクリスマス」と「イワークでビバーク」は、アニメ放送再開後の1998年10月5日、2話連続で放送された (テレビ東京系列のみ。他の地域では1話ずつ放送された)。手持ちポケモンがその時点で進化、離脱しているものもあり、放送時のシリーズ本編とは辻褄が合わなくなってしまっているため、特別編扱いされることが多い。
- また、再発防止策として、「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」が新たに設けられ、アニメ番組などの冒頭に「テレビを見るときは部屋を明るくして離れてみる」旨のメッセージが表示されるようになった[4]。
延期・自粛など
- 事件を受けて、ストーリーをテレビ放映とリンクさせる予定だった『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』と『ピカチュウのなつやすみ』は放映日程が大幅に延期された。また、『ミュウツーの逆襲』の予告編には「この作品は激しい表現を抑えて製作します」の但し書きが付記された。
- 1998年1月21日発売予定だったゲームボーイカラーが急遽発売予定日の延期を行った(発売されたのは、9か月後の1998年10月21日)。この事件の影響とされる。
- ファミリーコンピュータやスーパーファミコンなどのゲームを最新ゲーム機で遊ぶことのできるサービス・バーチャルコンソールでは、ハードウェアのエミュレーションによりソフトをなるべく忠実に再現しているが、事件の影響から、(特に事件以前に発売された)ゲームにおいて用いられている点滅表現や明度が変更されている。
その他
- ポケモンショックをジョークやパロディの題材として、いくつかのアメリカ合衆国のアニメ番組が扱っている。
- 1999年5月16日に放送された『ザ・シンプソンズ』の第10シーズン第23話「Thirty Minutes Over Tokyo」において、シンプソン一家の日本旅行での珍道中が語られるが、そのエピソードのなかに長男バートが見ていたテレビアニメ「戦闘ロボットシージャー」で放送されている内容に点滅シーンがあり、これを見た一家4人が痙攣を起こす場面がある。
- 1999年11月3日に放送された『サウスパーク』の第3シーズン第10話「Chinpokomon」において、アメリカ合衆国におけるポケットモンスターのブームをパロディとして扱っている。話中で、登場人物のひとりであるケニーがちらつくゲーム画面を見て光過敏性発作を起こして倒れる場面がある。また、同番組では、任天堂のゲームハードや“pocket monster”が陰茎を表す隠語であることなどもパロディとして扱っている。
- 上記2作品は、日本でも著名なアメリカ合衆国のテレビアニメ作品であるが、これらのエピソードは日本では放送されていない。ポケモンショックをパロディとして扱っていることに対し任天堂などポケモンの著作者側から抗議が来ることを考慮したものであるとされる。また、上記2作品では、前者では主人公が今上天皇を投げ飛ばす描写が、後者では『チンポコモン』を制作している会社の社長の名がヒロヒト(昭和天皇と同じ名前)であることから、皇室をパロディのネタとして扱ったことも、日本で放送されなかった原因のひとつとして挙げられる。
- 第38話が、"Most Photosensitive Epileptic Seizures Caused by a Television Show"(最も多くの視聴者に発作を起こさせたテレビ番組)としてギネス・ワールド・レコーズに認定された。
脚注
- ↑ 1秒間24コマの内1コマ~2コマ程度で画面を切り替えることによってスピード感を出す演出方法。
- ↑ 2.0 2.1 ポケモン騒動を検証する
- ↑ WEBアニメスタイル_COLUMN 首藤剛志が執筆している。 2014年3月31日閲覧。
- ↑ 現在ではほとんどのテレビ局で表示されるようにはなったが(アニメポケットモンスターでも表示される)、一部のテレビ局ではこのような表示をしていない。